第3.執行猶予や有利な刑の獲得を目指す事件の弁護活動
依頼人の刑を軽くするための弁護活動の1つに,犯罪をしてしまった依頼人が反省していることを裁判所に理解してもらうことが挙げられます。
例えば,被害者に宛てた謝罪文を依頼人に書いてもらったり,弁護士が依頼人と事件の原因などについて話し合います。
裁判では,依頼人に自分の口から事件のことや現在の心境等を話してもらい,反省の気持ちが裁判官等に伝わるようにします。
また,家族などに情状証人として出廷してもらい,裁判後の依頼人に対する監督を約束してもらうことも多くあります。
しかし,依頼人が反省の態度を示したり,家族が監督を約束するだけでは,刑は大きく変わりません。
量刑の重さを決める中心となるのは,事件そのものに関する事情(なぜ事件を起こしたか,どのような事件を起こしたか,結果はどのようなものであるか,など)です。
反省や謝罪といった事後的な事情は,刑を決める上で,付随的に考慮されるにすぎません。
したがって,依頼人にとって本当に有利な結果を得るためには,事件内容にしっかりと踏み込んだ弁護活動を行う必要があります。
例えば,事件に至った動機・経緯の中で,依頼人に有利な事情があれば,しっかりと主張しなければなりません。
軽い刑を目指す弁護活動において特に重要になるのは,
①量刑理論に関する的確な理解と弁護実践,
②事実を争う量刑弁護,
③他の専門家・専門機関との連携による環境調整
です。
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1.量刑理論に関する的確な理解と弁護実践
量刑(どのくらいの刑にするか)の判断には,一定のプロセスがあります。
例として,タクシー強盗をして運転手に怪我をさせてしまった強盗致傷事件で,どのように刑の重さが決まるかを説明します。
まず,同じような類型の事件でどの程度の刑が科されるのか,大まか目安を決めます。
強盗致傷事件であれば,被害者が亡くなっている強盗殺人事件に比べれば,刑の目安は軽くなるでしょう。
また,同じ強盗致傷事件の中でも,重大事件の多い銀行強盗のような場合に比べれば,タクシー強盗での刑の目安は軽くなるはずです。
次に,その事件の具体的な特徴を踏まえて,刑の大枠(例えば,「懲役●年~●年」という具体的な刑の幅)を決めることになります。
タクシー強盗の場合,刃物などの危険な凶器を使っていれば,より重い方に刑の幅は位置付けられることになり,計画性のない事件であればより軽い方に刑の幅が位置付けられるのが通常です。
最後に,事件そのもの以外の事情を考慮して,最終的な刑の重さ(例えば,「懲役●年」という結論)が決められることになります。
タクシー強盗の事件では,被害者との示談などが成立していれば,刑を軽くする要素として考慮され,最終的な刑が少し軽くなると考えられます。
このような量刑判断のプロセスに関する理解は,量刑が問題になる事件の弁護活動に不可欠です。
量刑理論を的確に理解せずに弁護活動を行っても,裁判所の量刑判断に十分な働きかけをすることは難しくなります。
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2.事実を争う量刑弁護
依頼人が容疑自体を認めている場合でも,事件の具体的な内容や事件に至った経緯などについて,依頼人の主張と検察官の主張が食い違うことがあります。
例えば,数名で実行された窃盗事件で,検察官は,依頼人が主犯格であると主張しているものの,依頼人は誘われてやっただけだと述べているような場合があります。
量刑の重さを決める中心となるのは,事件そのものに関する事情です。
事件の具体的な内容や事件に至った経緯の違いによって,量刑が大きく変わることもあり得ます。
上記の例でいえば,依頼人が主犯格と判断されるか,誘われて加わっただけと判断されるかで,刑の重さも変わってくるはずです。
したがって,軽い刑を目指す事件においても,事実を争うことをためらうべきではありません。
事実を争う量刑弁護で求められるものは,容疑を争う事件の弁護活動の場合と共通します。
徹底的な証拠開示や一貫した弁護戦略が不可欠になります。
容疑を認めているからといって,すべての事実を認めるわけではなく,争うべき点はきちんと争うこと。
こうして弁護活動を行うことが,依頼人にとってより良い結果をもたらすために不可欠です。
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3.他の専門家・専門機関との連携による環境調整
刑事事件を起こしてしまう人の中には,貧困などの社会的ハンディを抱えていたり,何らかの障がいを持っている場合があります。
そのような場合,事件の原因を解明するために,精神医学や福祉機関等の専門家による専門的知見,サポートが必要になることがあります。
また,依頼人本人の反省や家族のサポートだけでは,再犯防止策として不十分な場合があります。
専門家・専門機関による適切な支援が求められます。
そのような事件で弁護人に求められるのは,依頼人と他の専門家・専門機関をつなぐ役割です。
そして,そこで得られた成果を刑事裁判に提出することで,依頼人のために有利な刑を獲得することができます。
判決後の適切な引受先の機関が見つかることで,実刑を避けて執行猶予になるような事例もあります。
弁護人には,様々な専門家・専門機関との連携を調整する能力が必要になります。
刑事弁護に精通し,経験豊富な私には,それぞれ経験を通じて築いた専門家とのネットワークがあり,それを活用することができます。
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