会社の営業所閉鎖に伴い,子会社への出向を命ぜられました。転居が必要なため断ったところ,解雇すると言われました。

2017年01月15日(日)16:43

前提として出向義務があるか,また,出向を断ったことが職務命令違反にあたるかが問題になります。

まず,出向については,現在の雇用先に籍を置いたままとはいえ,長期間にわたってほかの会社での業務に従事することとなり,勤務先の変更に伴う負担や,今後の昇進等に不利益が生じるおそれがあります。
ですので,会社からの一方的な出向命令を制限して労働者を保護する必要があると考えられています。

営業所の閉鎖等,雇用調整の必要性があったとしても,必ず出向義務が発生するわけではありません。
就業規則等に出向命令についての定めがあるか,出向の条件が今回の出向を受け入れるのに十分かどうかによって,出向義務の有無が判断されます。
具体的には,密接な関係にある関連会社との日常的な出向であるかや,就業規則等で定められている出向先での賃金,労働条件,出向の期間,復帰の仕方などが,労働者に不利益とならないよう配慮されているかどうか等が考慮されます。

ですので,就業規則等における出向の定めが,労働者の利益に十分配慮していると認められない場合には,出向義務はなく,解雇事由にもなりませんので,不当解雇ということになるでしょう。

また,就業規則等の出向規定で,労働者の利益に十分配慮がなされていると認められる場合でも,出向命令に従わなかったことがただちに職務命令違反になるとは限りません。

労働契約法14条は「使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において,当該出向の命令が,その必要性,対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして,その権利を濫用したものと認められる場合には,当該命令は,無効とする」と定めています。

ですので,労働者が親の介護等で転居が不可能であるのに,何の配慮もなく出向を命じたというような事情がある場合には,出向命令権の濫用となります。
よって,出向を拒否しても職務命令違反にはならないと考えられます。

もっとも,このような個別的な事情もない場合には,出向命令が有効となり,労働者は職務命令に違反したことになりますので,解雇が有効となる可能性があります。

さらに,会社の営業所閉鎖という事情がありますと,会社側の経営上の理由による人員整理,いわゆる整理解雇としての有効性も問題になります。

 

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