籠池さん夫婦逮捕は妥当か

2017年08月02日(水)22:50

籠池さん夫婦が逮捕されたことが大きく報道されています。
しかし,この逮捕は妥当なのでしょうか。

刑事訴訟法は,逮捕について,次の様に定めています。

第199条
第1項 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、30万円(刑法 、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
第2項 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない
第3項 省略

と定めています。

つまり,

被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるとき
裁判官のあらかじめ発する逮捕状(令状)によって
逮捕することができるが,
明らかに逮捕の必要がないと認めるとき
逮捕状を発しない(逮捕することはできない)

ということです。

では,③はどういう場合かというと,刑事訴訟規則にこう書いてあります。

(明らかに逮捕の必要がない場合)
第143条の3 逮捕状請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは逮捕状請求却下しなければならない

つまり,

被疑者が逃亡する虞(おそれ)がない
かつ

被疑者が罪証を隠滅する虞(おそれ)がない

場合等ということです(なお,「等」とあるので,ⅰⅱの場合に限られません。)。
そして,逮捕状の請求を却下「しなければならないですので,裁判官に逮捕状の請求を却下するか否かについて裁量の余地はありません。

では,籠池さん夫婦の場合はどうでしょうか。

まず,➀「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」は,報道を見る限りは問題なさそうです。報道を見る限りは,ですが。

問題は,③「明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」です。
籠池さん夫婦に,ⅰ逃亡のおそれやⅱ罪証隠滅のおそれがあるかどうかですね。

どうでしょうか。

籠池さんは,大阪地検の出頭要請に素直に応じていました。
国会にも素直に行っていました。
大阪府議会にも素直に行っていました。

籠池さん夫婦に逃亡のおそれがある,と言うのは無理があると,私は思います。

また,

籠池さん夫婦の家には,既に大阪地検により捜索差押えが行われています。
証拠は押収済みのはずです。
罪証隠滅の客観的可能性はありません(可能性が残っていたら,それは捜索差押えをした大阪地検の落ち度です。)。
なお,籠池さんは黙秘していますが,黙秘していることは罪証隠滅のおそれを認めることにはならず,もちろん逮捕を認めることにはなりません。言うまでも無く,黙秘は,被疑者に認められた憲法上の権利です(38条1項)。

籠池さん夫婦に罪証隠滅のおそれがある,と言うのは無理がある,と私は思います。

皆さんは,どのように考えますか。

ところで,上記の内容は,法律と規則の条文を読めば簡単にわかります。ネットで誰でも読めます。
しかし,このような観点での報道に触れることはありません。
日本のマスコミのレベルの低さを悲しく思います。

同様の(より深刻な)問題は,逮捕の次の段階である勾留についてもあるのですが,それは籠池さん夫婦の勾留が決定したときに。

以上

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